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【レポート】【EVENT】4月スプリングイベントの様子をお届けします。

「4月スプリングイベント」のイベントレポートを公開します。

まちづくり、図書館が起点? 交流、刺激、新たな文化誕生

まちづくりと図書館の関係について考えたことはありますか? 図書館がまちづくりに与える影響について考えようと、「まちライブラリー」の名付け親で、都市計画や観光政策などについて詳しい大阪府立大学の橋爪紳也教授を招いて、4月10日にまちライブラリー@My Book Station茅野駅(長野県茅野市)でトークイベントを行いました。イベントには現地とオンラインを合わせて、約50人が参加。世界の図書館の事例も学びながら、自分たちの街に合ったライブラリーのあり方について考える場となりました。

一方通行から双方向へ 本を通して未知の交流

最初に、橋爪教授は自身が関わった事例として、行政と規制緩和の調整をしたり、市民に理解を求めたりなどの苦労を経て大阪で初めて実現した川辺や大阪城公園でのイベントなどを紹介。人が交流する場を一から作ってきた中で、まちライブラリー提唱者の礒井純充氏と出会い、2010年に「まちライブラリー」と命名した経緯を話しました。

名前の由来については、当初は「まち塾」という案だったとのこと。ただ、橋爪教授は「『塾』は一方的に教えてもらう場所だけれど、『ライブラリー』は自ら学びたい人たちが集まる場所なので、そうした場所が街のあちこちにあればいいなと思って『まちライブラリー』に決めました」と明かしました。

さらに橋爪教授は、従来の図書館は一方的にメッセージを発信するのに対して、まちライブラリーでは双方向性の交流を目指したことを説明。そのために1冊ずつ「感想カード」を差し込んでいるとした上で、「人と人が本の感想などのメッセージをつないでいくことで、本を通して人の顔が見えてきて、その刺激によって人は発酵します。そこから新しい都市文化が生まれるのです」と話しました。

ユニークな取り組みとして、橋爪教授が勤める大阪府立大学のまちライブラリーは、本棚だけが置かれた一風変わった状態で開館しました。本は、様々なワークショップを通して利用者がおすすめしたい本を持ち寄り、苗木を植えるように本を本棚に植える「植本祭」を行いました。

古書街、作品ゆかりの地巡り ブックツーリズムを提案

各地にまちライブラリーが増えていく中で2015年には、まちライブラリーや公共図書館、書店など本にまつわる場所140ヶ所が連動して、イベント「ブックフェスタ」を初開催。様々な交流が生まれる毎年の恒例イベントとなり、2020年は新型コロナの影響でリアルとオンラインを連動した形で実施しました。

本にまつわる場所同士の連携が生まれたことで、橋爪教授は本にまつわる場所を巡る動き「ブックツーリズム」を生み出すことを考えるようになりました。本と旅と言っても内容は様々で、「古書街を回ることや、作品や作家のゆかりの地を巡ること、魅力的な図書館や書店に出かけることなどを合わせて『ブックツーリズム』と呼んだらどうかと考えています」と話しました。

デンマーク・オーフスに学ぶ 図書館の姿

最後に、橋爪教授から世界の魅力的な図書館の紹介がありました。特にデンマーク第2の都市で、大学やIT企業が集まるオーフスにあり2015年にオープンした公共図書館「Dokk1」は、開館前には数年間に渡って、駅前の仮設スペースで、図書館の存在意義や期待する役割などについて市民と開かれた意見交換を実施。デジタル図書などの発達で2020年には従来の図書館はなくなると想定し、あらゆる年齢層が利用しやすく、協働や対話、知識の共有など現代に合った図書館のあり方を模索したそうです。街づくりと図書館整備を融合して取り組んだ結果、街の人口が増えると同時に、市民に親しまれ、世界に誇る図書館となりました。

このように、橋爪教授はまちライブラリーを命名してからの10年の取り組みと世界の事例を踏まえながら、「各地のまちライブラリーの開設からブックフェスタの開催を経て、本を目的に人が移動すると同時に新たなことが生まれ、それぞれの街が活性化するブックツーリズムへと展開していきたいと考えています」と締めくくりました。

今こそ求められる 意外性が生む新たなアイデア

講演後、参加者からの「まちライブラリーのような場所で本を媒介とした交流の魅力は何ですか?」という質問に対して、橋爪教授は「インターネット上でも本を見つけることはできるけれど、自分の興味があるものに限られてしまい、他の人と出会って違う考え方に気づくことはありません。ネットは予定調和なアイデアしか生まれないのに対して、まちライブラリーは偶発的に刺激を受けられる点が面白いと思います」と答えました。さらに礒井氏は「まちライブラリーの利用者からは、『意外性のある本に出会えるところがいい』と言う意見が多く寄せられています」と話し、利用者に新たな気づきが生まれる場になっていることを伝えました。

(文責・京谷)

概要

  • 日時:2021年4月10日(土) 13:00〜15:00
  • 会場:ワークラボ八ヶ岳イベントスペース(まちライブラリー@My Book Station 茅野駅)
  • 主催:ワークラボ八ヶ岳 / 一般社団法人まちライブラリー
  • 参加費用:無料
  • Facebookページはこちら

【テーマ】「まちづくりと図書館」

【登壇者】

  • 橋爪 紳也氏(大阪府立大学研究推進機構特別教授/同大学観光産業戦略研究所長)
  • 礒井 純充氏(まちライブラリー提唱者/森記念財団普及啓発部長/大阪府立大学観光産業戦略研究所客員研究員・所長補佐)

【内容】

大阪府立大学研究推進機構特別教授、同大学観光産業戦略研究所長の橋爪紳也先生をお招きして「まちづくりと図書館」をテーマに、図書館と地域の活性化、本とツーリズムのこれからなどについて海外の事例や国内での歴史的な変遷などを踏まえて、まちライブラリー提唱者の礒井氏とともに考えていくイベントを実施いたします。

橋爪先生は、関西を中心に都市開発、まちづくりの第一人者としてご活躍され、まちの文化創造に数々の提案、実践をされています。また2025年の大阪で実施される万国博覧会の誘致構想立案にも尽力されました。2013年に開設された大阪府立大学のサテライトキャンパスと同施設に併設されたまちライブラリーの生みの親でもあります。

ここ「まちライブラリー@My Book Station 茅野駅」も皆さんと育てる地域の図書館であり、本屋でもある新しい取り組みでありますが、既に本棚オーナーになられた方もこれから本棚オーナーになりたい、まちライブラリーを利用したい、茅野市のこれからを考えたいという皆様と一緒に蓼科や八ヶ岳の自然あふれる環境に包まれた茅野市での新たなまちづくりと、本のある場所を考えていけたらと思っております。

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